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「のび太さんのことを永遠に忘れさせて……」

学校でも常に一目置かれる模範的優等生、出来杉英才はある日、

のび太と静香が結婚するという未来は実はひとつの可能性に過ぎず、

未来は別様なものへと変化させられることに気付く。

はたして英才は静香を振り向かせることができるのか……? 

メイヤスーの「事実論性の原理」を『ドラえもん』の世界に応用した表題作

「出来杉英才の青春」。

「でも、さっきの出来杉さんを見て、

 わたし気付いたの。

 こんなにわたしのことを

 好きでいてくれる出来杉さんのことが、

 わたしも大好きなんだって!」

「大好きなんて言葉じゃ言い

 足りないよ。

 本当に、静香ちゃんのことが好き

 で好きで溜らないんだ」

むかし遊んだ『ポケットモンスター』で、

死んでしまったヒトカゲをトキワの森に埋葬した記憶を持つ少年は、

大人になったある日、現実世界の川縁で奇妙な化石を発見する……。

ゲームと現実の奇妙な交叉配列を描く「ヒトカゲの化石」。


ルイーダの酒場で少年が出会ったのは、

かつて勇者と崇められた盲目の老人アルスだった。

『ドラゴンクエスト』の世界を舞台に、

ゲームの内部でゲームそのものが自己解体される過程を描いた

「老いたる勇者はかく語りき」。

少年時代に熱中して楽しんだレトロゲーム漫画の世界を、思弁的(speculative)にもう一度遊び直すために書かれた著者最新の短編小説集。

僕はゲームの世界の中で、

ある特別な経験を

したのではなかっただろうか。

「あらゆるポケモンを

 野性に戻せ……」

「魔王と呼ばれた存在について

 知っているかね……?」

アルスに、あの扉を開ければ

遂に会える……。

僕は心弾んで、

ルイーダの酒場のドアを開けた。

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